プレスリリース

平成23年度携帯電話・PHSにおけるリサイクルの取り組み状況について

2012年6月26日

社団法人電気通信事業者協会

社団法人電気通信事業者協会(TCA)と一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)は、「モバイル・リサイクル・ネットワーク(MRN)」として携帯電話・PHSにおける資源の有効利用について取り組んでいます。

TCAでは携帯電話・PHS事業者等の協力を得て、平成13年4月からMRNを立ち上げ、サービス提供事業者、製造メーカーに関係なく、使用済みの携帯電話・PHSの本体、電池、充電器を全国約10,000店舗ある専売店を中心に、自主的に回収する活動を推進しており、平成22年度までの10年間で累計8,560万台を回収しています。

 

また、リデュース(抑制)、リユース(再使用)、リサイクル(再資源化)については、CIAJが「携帯電話・PHSの製品環境アセスメントガイドライン」を制定し、製造メーカーにおける指針として製品アセスメントを実施する等の対応を進めています。

今般、平成23年度のリサイクルの実績に関するとりまとめが完了しましたので、お知らせします。

1. 平成23年度リサイクル実績と再資源化状況について

(1)リサイクル実績について

  平成23年度 平成22年度 平成21年度 平成20年度
  回収台数
(千台)
回収重量
(t)
回収台数
(千台)
回収重量
(t)
回収台数
(千台)
回収重量
(t)
回収台数
(千台)
回収重量
(t)
本体 6,965 666 7,343 696 6,920 602 6,174 533
電池 9,739 192 10,085 198 9,188 191 8,388 167
充電器 3,186 241 6,120 461 6,255 467 4,776 355

注)充電器とはACアダプタ・卓上ホルダを示す。

平成23年度の本体の回収台数は、前年度実績から38万台減少(-5.2%)致しました。スマートフォンの普及等で、端末の多機能化・高機能化が進展し、通信機器として使わなくなった端末を手元に保管し続ける利用者が増え続けているなかで、平成21年度からの増加傾向は一旦止まったものの、本体の回収台数は697万台と平成21年度を若干上回る結果を維持できました。

(参考)年度別回収実績の推移(過去10年、単位:千台)

(2)再資源化状況について

端末に含まれる金属は、鉄、アルミニウム、マグネシウム、金、銀、銅などですが、金、銀、銅、パラジウムなどの金属は素材に戻し、再利用をしています。精錬の過程で発生するスラグは路盤材、湾岸施設(テトラポット中込材)などに利用されています。

また、金属以外の素材(プラスチック、ガラスなど)についてもリサイクル処理を実施しています。プラスチックは低温溶解により樹脂材となり、ハンガー等の日用品、プラスチック収納容器、玩具の筐体等に利用されています。

(3)自主的な数値目標に係る実績について

MRNによるリサイクル活動を推進するため、平成21年度から、自主的な数値目標を設定致しましたが、各数値目標に係る昨年度の実績は、以下のとおりとなりました。

指標 目標 実績 前年度(参考)
① リサイクル活動の認知度 70%(*1) 62.9% 64.8%
② マテリアルリサイクル率 70%(*2) 96.1% 94.7%
③ 回収率 30%(*3) 26.3% 37.8%
  • (*1) 「利用者の意識・行動に関するアンケート調査」により評価
  • (*2) MRNとしての端末本体のマテリアルリサイクル率(回収した端末から採取できる金属等のリサイクル率)
  • (*3) 事業者全体の回収率
    =「事業者全体の専売店等での回収台数」÷(「専売店等での機種変更」+「任意解約数」)

今回は回収率が目標値を下回り、前回との比較でも低下しましたが、これは、スマートフォンの急速な普及により、利用キャリアの変更や機種変更が増加する一方で、アンケート調査でも明らかなようにスマートフォンのユーザーの旧端末の保有意向が高いことが影響を及ぼしたのではないかと推測されます。今後、回収拠点の拡大や周知強化を通じて、利用者から本来排出されるべき端末を対象とした、より一層確実な回収・再資源化に努めてまいります。

2.利用者の意識・行動に関するアンケート調査結果について

リサイクルに関する実態を調べるため、携帯電話・PHS利用者約2,000人に対するアンケート調査を実施しました(添付資料1参照)。

  1. 過去1年間に買換・解約等により端末を処分したことがある人の割合は全体の12.5%でした。
    ※ 処分したことのない人の中には、買換・解約の際に端末をお手元に残された人、買換・解約等の機会そのものがなかった人の両方が含まれます。
  2. 端末処分経験のある人のうち、処分した端末は「1台前(直近まで使用していた 端末)」が、71.4%で最も多い一方、「2台前」が24.3%、「3台前」が11.2%等、古い端末を処分した人も、昨年同様、一定数見られました(複数回答)。
  3. 端末の処分方法としては、「専売ショップで引き取ってもらった」人が62.5%、「量販店で引き取ってもらった」人が10.4%である一方、「ゴミとして捨てた」人も8.1%見られました。また、「中古品として売却した」とする回答は6.2%であり、概ね前回と同様でした。
  4. 通信機器として利用中のもの以外に保有している端末がある人は全体の64.1%で、端末の高機能化を反映し、引き続き過半数の人が保有しています。
  5. 通信機器として利用中のもの以外に端末を保有している人の保有理由(複数回答)を見ると、「保存しておきたいデータ(写真、メール、コンテンツ等)があるため」が36%、「通信以外の機能を利用しているため」が27%、「コレクション、思い出として保存(端末に愛着がある)」が24%、「特に理由は無いが手放し難い」が18%と続きます。これにより、端末が多機能化・高機能化しパーソナルツールになったことに伴い、端末に保存された様々なデータが端末使用後も必要とされていることや通信機能以外の用途での二次利用、或いは端末への愛着等の様々な理由から、旧端末を持ち続けていることなどが明らかになりました。
    一方で、「個人情報が漏れるのが心配」とする回答が13%あり、個人情報に関する懸念の大きさが窺えます。また、「どのように処分したらいいかわからないから」も9%ありました。データ移行の可能性の周知や店頭での支援、MRN参加店舗であれば十分な個人情報保護措置を講じられていることについての踏み込んだ周知やリサイクルの認知度向上のための一層の周知活動が必要であると考えられます。
  6. 通信機器として利用中のもの以外の保有端末を今後「処分してもよい」「まあ処分してもよい」と回答した人の合計は、「1台前(直近まで使用していた端末)」でも48%、それ以前の端末では50%程度となるなど、潜在的な回収の可能性を示しています。また、データの移行や個人情報対策で安心できれば、処分意向が高まることから、保有理由でも示唆されたように、今後はこの面での取り組みが必要になると考えられます。
  7. 不要端末の処分方法についての自治体からのお知らせを見たことのある人は、12%であり、周知に関する自治体の更なる協力が期待されます。
    なお、「自治体からのお知らせを見たことがある」人の認知経路としては、「広報紙」が最も高く52%、その他「ゴミカレンダー」や「ゴミ分別マニュアル」が主な認知経路として機能しているようです。
  8. MRNによるリサイクルに関する認知度は、ロゴマークも含め、浸透が進んでおらず、引き続き地道な周知活動の継続が必要だと考えられます。
    MRNの認知度:昨年度調査 65%→今年度調査 63%
    ロゴの認知度:昨年度調査18%→今年度調査19%
  9. また前回に引き続き、スマートフォンユーザーについても切り出して調査を行ったところ、僅か対象の1割だった前回と比較すると、スマートフォンユーザーが対象の約3割を占めるまでに増加していることが明らかになりました。今回も引き続き参考という位置づけではありますが、前回明らかになった、通信機器として利用中のもの以外の端末の保有率が従来型の利用者よりも高いことや、使用済み端末の処分意向も低いことが一層明確に表れており、これらユーザーのMRNに関する認知率が比較的高いことを考慮すると、加速度的にその割合が増加し続けるスマートフォンユーザーは、これまでのユーザーとは異なる処分・保有傾向を有することが想定されます。今後は、このような新たな状況を前提とした取り組みが必要だと思われます。

3.リサイクル向上に向けた今後の対応について

(1)認知度の向上等に向けた施策展開

MRNの内容等について、ホームページ・カタログ・取扱説明書・請求書同封物などにおける周知、専売店等におけるリサイクル紹介ポスターやステッカー等の掲示ならびに説明用ツールの配備、マスコミ等の取材などの機会を捉えた訴求、ゴミの収集を行う自治体への周知協力依頼等を行なっていきます。そして、回収を促進するため、専売店等の店頭における買換・解約時の案内を引き続き強化していきます。

(2)回収機会の拡大

家電量販店、情報通信機器メーカー、電気通信事業者等の団体及びその会員企業により設立された「携帯電話リサイクル推進協議会」の関係団体との連携を深め、より多くの排出機会や利用者接点において、適正な個人情報管理を行いつつ回収機会の増大を図るとともに、周知活動の強化を行っていきます。

(3)回収可能性を高める対策

  1. 端末内に保存・蓄積した情報やデータ(写真、メール等)に愛着を感じているという利用者の声に対する対策として、保存・蓄積したデータの新端末への移行やバックアップについての利用者への情報提供や店頭での支援を強化していきます。
  2. 端末内の個人情報漏えいを心配する利用者の声に対する対策として、回収時における確実なリセットや破砕機による端末の破砕(キーボードへの穴あけ)等の実施及びこれらの運用管理を徹底するとともに、MRN参加店舗においては安心して使用済み端末を預けていただけることの利用者への周知を強化していきます。

(4)3Rに対する取組み

  1. 「携帯電話・PHSの製品環境アセスメントガイドライン」を更に充実させ、3R(リデュース、リユース、リサイクル)に配慮した製品設計等を一層推進します(添付資料2)。
  2. マテリアルリサイクル率の向上を図るとともに、部品をリユースする可能性についても検討を進めていきます。

4.「モバイル・リサイクル・ネットワーク」への参加企業について

添付資料3のとおり。

 

モバイル・リサイクル・ネットワークロゴマーク
URL:http://www.mobile-recycle.net

【本件に関する問合せ先】

・社団法人電気通信事業者協会(TCA)
業務部 矢橋 康雄 TEL:03-3502-0991
URL:http://www.tca.or.jp

・一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)
サービス部 大川 努 TEL:03-5403-9358
URL:http://www.ciaj.or.jp

別添資料2
平成23年度 携帯電話・PHSにおける製品環境アセスメント評価の結果報告について

平成24年6月26日
一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会
移動通信委員会

一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)は、社団法人電気通信事業者協会(TCA)と共同で、自主活動組織「モバイル・リサイクル・ネットワーク」にて、携帯電話・PHSにかかる資源の有効利用について取り組んでいます。その一環として、移動通信委員会では、リデュース(削減)、リユース(再使用)、リサイクル(再生)について、「携帯電話・PHSの製品環境アセスメントガイドライン」を制定し、メーカーにおける指針としています。

今般、会員各社の協力を得て、平成23年度の製品環境アセスメントを実施しましたので、その結果を公表します。

1. アセスメントの概要

  • 実施期間  平成24年2~3月
  • 参加会社   11社
    NECインフロンティア(株)、NECカシオモバイルコミュニケーションズ(株)、カシオ計算機(株)、京セラ(株)、シャープ(株)、セイコーインスツル(株)、ソニーモバイルコミュニケーションズ(株)、日本無線(株)、(株)ネットインデックス、パナソニックモバイルコミュニケーションズ(株)、富士通(株)
  • 対象機器   調査時点の各社の携帯電話・PHS端末、データ通信カード
  • 実施方法
    CIAJ移動通信委員会制定の「携帯電話・PHS端末の製品環境アセスメントガイドライン(第3版)」の全評価項目を調査票により調査、集計。

2. 集計結果の概要

スマートフォンの伸長で機能アップすると共に薄型化や軽量化を進める中、アセスメントガイドラインを考慮した設計の継続推進が求められています。

参加会社は平成22年度と同数の11社、対象機器はスマートフォンを含む携帯電話・PHS・データ通信カードで、各社とも3Rを積極的に推進している状況が確認されました。

  1. リデュースの評価
    各社とも、通信速度の高速化や液晶の大型高精細化を進めているが、その中で薄型化や軽量化で省資源化を図り、消費電力の低減にも努めている。また、液晶強度の向上などで耐久性の向上にも努めている。希少材料削減の取組みに関しては、各メーカーとも部品メーカーに頼る面が大きいものの、部品メーカーと協力しながら削減に取り組んでいるところである。取扱説明書は、電子書籍化によって簡易版のみ同梱する簡素化が進んでいる。包装材は、国内生産品は各社とも再生材を使用しているが、海外生産品では再生材の使用ができていないものもある。
  2. リユースの評価
    各社とも筐体とプリント板を容易に分解できる構造をとり、取り付けねじなどを統一するなど修理しやすい構造をとっている。また、納入先仕様にあわせた共通ACアダプタへの対応に取り組んでおり、種類と数のより一層の削減が進んでいる。
  3. リサイクルの評価
    一部のモデルで薄型化に伴う強度アップのために金属とプラスチックなどの複合材を使用している製品もあるが、各社とも複合材料の削減に取り組んでいて、再利用や機械粉砕処理などへの影響を考慮している。また、部材主成分と異なる材質の金属メッキ、塗装、樹脂コーティングなどの削減にも取り組んでいるが、デザイン面の要求から外観部品の塗装やメッキの廃止までは対応ができていない。
    また、再資源化原料として利用が可能な材料部品にするための解体・分解が容易な構造の設計を推進している。
    貴金属、希少金属類を含む部品についてもその把握に取り組み始めている。
    また、従来から引き続き、二次電池本体にリサイクルマークや材質などを表示するとともに、製品本体及び取扱説明書などに二次電池を使用していることについての表示をおこなうなど、二次電池の回収・リサイクルを容易にするための取り組みもおこなっている。

3. 今後の予定

携帯電話・PHSではスマートフォンの普及に伴って、高機能化・薄型化・デザイン性重視の傾向が強くなっていますが、3Rに対する関心も国家的なレベルで一層高くなってきています。各社は、顧客のニーズと3Rの双方の要求を満足させるべく、引き続き製品環境アセスメントの内容を考慮した製品設計への取り組みが重要と考えています。

集計結果も踏まえ「製品環境アセスメントガイドライン」を更に充実させ、各社の携帯電話・PHSおよびデータ通信カードなどの3R取り組みに向け、より一層の活動を推進して参ります。

本件に関するお問い合わせ先

一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会
サービス部長
大川 努
TEL: 03-5403-9358

以 上

別添資料3
モバイル・リサイクル・ネットワーク参加各社(2012年4月1日現在)

通信事業者
株式会社NTTドコモ
KDDI株式会社、沖縄セルラー電話株式会社
ソフトバンクモバイル株式会社
イー・アクセス株式会社
株式会社ウィルコム、株式会社ウィルコム沖縄
販売会社
株式会社ビックカメラ
製造メーカー
NECインフロンティア株式会社
NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社
カシオ計算機株式会社
京セラ株式会社
シャープ株式会社
セイコーインスツル株式会社
ソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社
株式会社東芝
日本無線株式会社
株式会社ネットインデックス
パナソニックモバイルコミュニケーションズ株式会社
株式会社日立国際電気
株式会社日立製作所
富士通株式会社
リプロ電子株式会社

以 上

前のページへ戻る